出産被保険者に係る産前産後期間の所得割保険料及び均等割保険料の軽減措置を定めることについては、評価をするものです。
しかし、今回の条例改正には、国民健康保険制度の府内完全統一化が含まれています。統一化によって国保財政は大阪府が握ることになり、実質は大阪府国保運営方針に従わなければなりません。市町村は賦課や給付の権限をもちながらも、独自の減免制度や多子世帯や低所得者への負担軽減を実施することができなくなることが、審議の中でも改めて明らかになりました。
そもそも、安倍政権下の2018年度に導入された国保の都道府県化は、国保を市区町村と都道府県の共同運営の保険とし、財政の監督責任を都道府県に負わせ、市区町村が独自に行う保険料軽減のための公費繰り入れ(法定外繰り入れ)を削減・廃止させ、国保料・税の連続・大幅値上げを迫る仕組みが設けられています。
大阪府は、全国にさきがけ統一化を進めてきましたが、緩和期間のこの6年間でも保険料は上がり続け、私たちがモデル世帯換算で調査した結果、2023年度には府内9割の自治体で国保料が値上げされています。全国的に見ても値上げした自治体の割合が突出して高く、統一化が保険料を押し上げ、加入者の負担を増大させていることは火を見るよりも明らかです。
こうしたことから、大阪府国保運営協議会においても各自治体から、統一化においての加入者の保険料負担抑制や、均等割と平等割の割合見直し等、様々な懸念や意見が出されているのは当然のことです。
国保は自営業やフリーランス、年金生活者、健康保険非適用の非正規労働者などが加入し、他の医療保険に加入しない、全ての住民に医療を保障する制度です。現役時代は健保や共済に入っていた人も、年金生活者になると多くは国保に加入するなど、「誰もが一度はお世話になる医療制度」であり、国民皆保険の根幹をなす保険制度です。そして、憲法25条の「生存権」を保障するものであり、国民健康保険法では、国民健康保険は社会保障であることが明記されています。また、一部負担金の減免、保険料の減免も定めています。
加入者の貧困化が進んでいる今こそ、地方自治体は自治権を発揮し、これらの趣旨に乗っ取り、社会保険に比べ所得に占める割合が高い保険料の抑制・値下げを行い、住民の福祉と健康を守るために努力すべきです。また、これまでの黒字分の繰越金は、被保険者の納めた保険料であり、保険料引き下げや減免など、これからも当然、国保加入者のために使うべきです。
以上のことから、吹田市の独自性、自治権を侵害し、国民健康保険加入者の負担を増大させ、国民皆保険制度の根幹そのものを危うくする、府内統一化の条例改正は認めることはできません。(反対少数で可決)