認められないもの
●職員の長時間労働解消について
コロナ禍に比べれば少なくなってきているとはいえ、過労死ラインといわれるような長時間労働の実態が各職場にあり、解消のための取り組みが抜本的にすすんでいるとはいえない。第3期職員計画では人口が増えるなどして仕事量が増えているにもかかわらず、本来必要な職員数を増やす計画にはなっていない。小手先の対策ではなく、根本的な改善を求める。
●会計年度任用職員について
昨年の人事院勧告を受けて、本市正職員の給与引き上げが遡及措置された。一方国の種々の通知では会計年度任用職員に対しても、地方自治体として正職員に準拠する給与改定が求められていたが、市は遡及適用しないことをシステム上の理由など言い訳に終始している。国の同一労働同一賃金や平等の原則に反しており、早期の改善が求められる。府内でも給与の遡及支給実施が多数となっており、市の対応は不十分といわなければならない。
●中学校へのデートDVの出前講座について
2024年度も引き続き実施されるが、2023年度実施を見送られた小学校への「みんないきいきプログラム」について、実施が検討されていない。
●指定管理者制度が導入された都市公園について
第3者モニタリングでは、一部で、樹木が枯れる等、樹木の生育の問題などについて課題があることが明らかになった。直営であればそのようなことは起こらないと答弁されている。民間のノウハウを活用し、市民サービスを向上することが指定管理者制度導入の前提のはずが、樹木など公園管理の最もベーシックな技術や知見が十分でない事業者が管理しており、今後のパークPFIや指定管理者制度の導入計画についてはいったん見直すべきである。
また、68年が経過した中の島公園の再整備については、パークPFI手法によらず市の責任において行うべきである。老朽施設の更新や大型遊具など住民のニーズにこたえ、引き続き誰もが利用しやすく緑豊かな公園となるよう、改修を行うことを求める。
●北千里公民館の指定管理導入について
吹田市内の公民館は「吹田方式」とよばれ、地域の連合自治会に運営を委託してきた。館長は地域の方を会計年度任用職員として直接雇用し、文化祭は地域で企画運営委員会をひらき、その地域の特色をいかし、生涯学習の場として、地域で学び文化を作ってきています。無理矢理に、3施設を一体化し、管理運営手法を複雑化したことが混乱をまねいた。それをあたかも、地域住民が運営できなかったからとして、安易に指定管理者へ委ねることにより、地域と切り離してしまうことが懸念される。
●二十歳を祝う式典について
2016年から、予算額全体は7倍になっており、この2年間は、市長の身内をゲストとして呼び、公金を支出していたことは市政の私物化と言わざるをえない。「清新な市政」をかかげた初心を忘れたのか。新年度はさらに予算を増額しているが、「二十歳の青年をお祝いする」という式典本来の目的を達成するよう求める。
●万博関連の「機運醸成」について
そもそも、関西万博の開催が危ぶまれ、破綻している。ワークショップというよくわからない取り組みに3000万円を超える税金を投入することは市民理解を得られない。
●高城児童会館移転建て替え後の日の出児童センターについて
他にはない18歳までの受け入れや不登校の居場所等、新たな機能を加え、その運営をノウハウのある民間事業者に指定管理で実施しようとしている。事業実施には地域や学校との連携が必要であり、地域は市直営の運営を望んでいる。機能強化で安易に指定管理者制度の導入をすべきではない。
●新年度の保育所待機児童問題
保育園未利用児、いわゆる待機児童数が900人以上に上ることが明らかになった。市は国基準では待機児童が解消したとして、待機児童解消アクションプランを終了したが、実態は、入りたくても入れない、兄弟分園や、遠方で入所をあきらめざるを得ない子どもたちが多数いるなどの現れである。市はこれらの状況を真摯に受け止め、認識を改め、真の待機児童解消に向けた特別な対策が必要である。
●第9期吹田市高齢者保健福祉計画(第9期吹田健やか年輪プラン)の策定にあたって
事業所アンケートでは、61・5%の事業所で職員が不足していると回答。障害福祉事業所の職員充足率は40・7%であり、事業の維持ができなくなる危険水域である。しかし市は喫緊の課題としながら効果的な人材確保策を打ち出していない。他職種に比べ賃金が低いことが人材不足の一つと考えられる。奨学金代理返還制度や家賃補助等、実質的に賃金の上乗せになるような対策を実施せよ。
●今年度1回支給だけで廃止となる障害者福祉年金について
その財源を活用し、年金に代わる事業を実施するとのことであったが、実際は法律改正によるものや、年金の趣旨とは関係のないものも含まれ、年金削減に代わる生活支援やサービス向上につながっていない。
また、事業廃止や廃止に伴うそれに代わる事業の実施についても、障がい当事者の声や実業を無視し一方的に進めるやり方は、障害者権利条約に反している。予算委員会意見の中でも述べたが、障害者権利条約や国連の勧告に従い誠実に履行するならば、障がい者福祉年金及び難病患者等給付金事業は継続すべきであるとともに、更なる施策の充実が必要である。
まとめ
予算編成におけるバランスの公正さに問題あり
総括質疑で指摘した学童保育の施設改善と二十歳を祝う式典。個々の事業を見比べるものではないというが、その結果市全体を見渡して、より切実な課題を後回しにするというバランスを欠いた予算。その責任は市長にあります。
財政調整基金は積み増しされている
第4次総合計画が見直され、標準財政規模の20%として約160億円を予定している。市は感染症や災害等緊急時の財源としての確保を理由にしているが、その根拠もあいまいであり、例えば、コロナ禍の下で基金を活用した施策の多くが、その後の国の交付金の手当てによって積み増しされているのが実態となっている。市民生活は、さらなる物価高騰や社会保障の削減などで困窮している状況であり、必要な施策に対しては柔軟かつ積極的な活用がおこなわれなけれならない。
市民の声をまともに聞かない市長の政治姿勢の問題
昨年の市長選挙当選後に、「これからもさらに市民の意見をきいていく」と言っていたが、新年度の予算や事業について、市民から何をどのように聴いたのか?住民自治の形骸化は後藤市政の特徴となりつつある。そのもとで、「80年を超える市政運営を担ってきた先人たちに敬意と感謝を表する」といいながら、先人の築いた暮らしやすい吹田のよさを削ったのが新年度予算である。
吹田事件について
吹田事件とは
最後に吹田事件について触れておきます。
今議会において、吹田事件に関する自民党議員による質問と地域教育部、教育監の答弁がありました。吹田事件とはなにか?ということですが、朝鮮戦争2周年目の1952年6月25日、朝鮮戦争や軍需輸送に反対してデモ行進に参加した日本人と朝鮮人250人が逮捕され、うち111人が騒擾罪などで起訴された事件。日本政府は当時、アメリカの軍事行動を後方支援しており、デモ隊が行進した国鉄吹田操車場は朝鮮への軍需輸送の拠点とされ、民需輸送が後回しにされていました。
裁判は1963年の一審判決までに11年、1972年の最高裁での上告棄却まで20年となり、長期にわたり「被告」とされたデモ参加者は社会的制約を受け、裁判中に6人が亡くなるなど、「非人道的な長期裁判」と指摘されました。最大の焦点だった騒擾罪について一審も二審も無罪となり、二審は威力業務妨害罪のみ執行猶予付の罰金3000円としました。
この裁判ではイデオロギーにとらわれない幅広い弁護団が組まれました。初代主任弁護人となったのは、山本治雄弁護士で、のちに吹田市長になられた方で、山本つとむ前市議のお父さんでもあります。
判決は襲撃目的であることを明確に否定
判決では、「集団行動の目的は、検察官の主張するように、吹田操車場において軍需列車を襲撃するとか破壊するとかにあったと認めることはできず、朝鮮戦争に反対し、吹田操車場の軍需輸送に対する抗議のための示威行進にあったと認めるのが相当である」「真に集団が操車場襲撃を企図していたものとすれば、操車場において、もっとそれにふさわしい行動があってしかるべきものと思われる」と、吹田操車場の襲撃を目的としていたとする主張を明確に退けています。
また、警察の警備線は暴力ではなく、警官隊が八の字に道を開ける形でデモ隊を通していることは裁判で警察が認めており、写真でも記録されています。
デモは平和的に行われた
デモ隊の様子を裁判で証言した証人の地域住民たちは、「太鼓をたたいたり歌をうたったり、おもしろいなぁと思ってみていた」「兎狩りのような感じでした」と語っており、「恐怖のるつぼ」に陥れたのは、国鉄吹田駅に整然と入ったデモ隊が流れ解散となり電車に乗り込んだデモ参加者を銃撃した警察でした。
また、デモ中に起こった一部の参加者による暴行をもって、デモ隊全体を「暴徒」とみるかどうかですが、デモ隊全体は、立ち止まることもなく、行為者を支援することもせず、粛々とデモを続けました。だからこそ、デモ隊全体に「暴徒」としての共同の意思がなかったものとして、騒擾罪は無罪になったのです。
吹田事件への認識があまりにも不十分
歴史修正は許されず事実を正確に伝えよ
地域教育部長の答弁にあった「武力衝突」という言葉は、武装し軍事力を備えた集団と集団が対峙している様子が想起されるような表現であり、判決で示された事実と異なるうえ、博物館に寄贈された公判記録の資料を精査したわけでもなく、これまでの吹田市としての到達点を無視したものです。また、騒擾罪と威力業務妨害罪を同列に扱うかのような発言は、余りにも吹田事件に関する認識が不十分といわざるを得ません。
市が行うべきは、答弁を訂正して関係者の名誉を回復するとともに、存命している事件関係者への経過の聞き取りと史料調査を行い、改めて郷土の歴史として正確に事実を伝えることです。歴史を修正するような市の姿勢は、断じて許されないことを強く申し上げ意見とします。
吹田事件裁判の様子
(吹田事件の部分については、一般会計予算外として議事録から削除されるおそれがあります。)